9月23日
森 崇
先週の動き
ダウ指数は先週、週間ベースで2.8%上昇。S&P500指数も同2.8%上昇した。またナスダック指数は同2.7%、小型株指数のラッセル2000指数は同3.8% 上げた。
セクター別パフォーマンスでは、先週は、S&P500指数10業種全てで上昇した。上昇率の大きかったものから順に、素材、石油・天然ガス、通信サービス、工業、ハイテク、金融、公共、ヘルスケアー、消費財、消費サービスだった。
米国株相場続伸の背景
1.大幅利下げ決定。これにより景気後退懸念が沈静化。
米連邦公開市場委員会(FOMC)がFFレート0.5ポイントの大幅利下げを
実施したことを好感し、買いが膨らんだ。信用市場の損失と不動産市場の低
迷の悪影響が景気全体に及ぶのを回避する為、大幅利下げを決定した。
また、公定歩合を0.5ポイント引き下げ5.25%とすることも決めた。FF金
利誘導 目標の引き下げは2003年6月25日(0.25ポイント引き下げ1%に)
以来、4年3カ月ぶり。0.50%の大幅利下げはイラク戦争が迫り、地政学的
リスクが景気を圧迫していた2002年11月6日の会合(0.5ポイント下げ
1.25%に)以来4年10カ月ぶりになる。
2.住宅建設株が上昇。FOMCが大幅利下げを実施したことが買いを誘っている。
19日発表の8月の住宅着工件数が12年ぶりの低水準になったことは在庫調
整が進むとの思惑につながり、買い材料視されている。住宅着工件数の減少
は不動産市場の低迷が経済全体に悪影響を及ぼすリスクを高めたと言えるが、
住宅の過剰在庫の処分が進むとの見方にもつながっている。
3.信用市場の低迷克服の為に、米連邦住宅公社監督局にポジティブニュース。
米住宅金融大手ファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連
邦住宅貸付抵当公社)の規制機関である米連邦住宅公社監督局(OFHE
O)は、ファニーメイとフレディマックに対し、住宅ローンポートフォリオ
の上限引き上げを許可する。
4.ミクロでは、以下の通り主要企業に好材料が出た。
@ナイキ(NKE)
スポーツシューズ・メーカー大手が20日引け後に業績発表。予想を上回る好
決算だった。これを受け、シティ・インベストメント・リサーチが同社株の
目標価格を65ドルから67ドルに引き上げた。
Aオラクル(ORCL)
データベース・ソフト大手のオラクルが20日引け後に業績発表。予想を上回
る好決算だった。これを受け、シティ・インベストメント・リサーチが同社
株の目標価格を24ドルから25ドルに引き上げた。
Bテキサス・インスツルメンツ(TXN)
携帯電話機用半導体の生産で世界最大手のテキサス・インスツルメンツは21
日、株式買い戻し資金を50億ドル増額するとともに、今年に入り2回目とな
る配当金の引き上げを実施。新規の配当金は25%引き上げられた。
Cリーマン・ブラザーズ(LEH)
リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが18日寄り前業績発表。2007年
6−8月(第3四半期)の純利益は8億8700万ドル(1株当たり1.54ド
ル)と、前年同期の9億1600万ドル(同1.57ドル)を下回った。予想1株
当たり利益は1.48ドルだった。サブプライム住宅ローンに関連した損失が影
響した。ただ、株式トレーディングや投資銀行の収入増加に助けられ、利益
は予想ほど悪化しなかった。
Dベスト・バイ(BBY)
米家電量販大手のベスト・バイが18日発表した2007年6−8月(第2四半
期)決算は市場予想に反して増益となった。コンピューターや海外の売り上
げが好調で、通期の1株当たり利益見通しを上方修正した。
Eクローガー(KR)
スーパー・マーケット、コンビニ・チェーン運営会社が本日寄り前に業績発
表。予想を上回る好決算だった。
3.複数の企業に買収観測が出た。
@スプリント(S)
携帯電話サービス大手株が買われた。買収の噂が出ていた。
Aエスティ・ローダ(EL)
コスメティック大手株が上伸。やはり買収の噂が出ていた。
4.金や銀、銅などの相場が上昇したため、フリーポート・マクモラン(FCX)
等鉱山株に買いが入った。
一方で懸念材料
1.インフレ懸念から、債券相場が軟調。米国債市場では2年債と10年債の利回
り格差が2005年5月以来の最大に拡大した。ドル安と利下げでインフレ懸念
が強まったことが背景。10年債の利回り上昇は2年債利回りの上昇ペースを
上回り、イールドカーブがスティープニング化した。
バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が議会証言で住宅市場の調
整がさらに深刻化する危険性があるとの見解を示したことから、更なる利下
げ可能性が高まった。米連邦公開市場委員会(FOMC)は国内景気配慮優
先で、インフレ防戦にやっきになっていないとの見方が強かった。また、金、
銀、原油等の商品価格が軒並み急伸していることも圧迫要因だった。以下が
主要米国債利回り推移である。スティープニング化が進んでいる。

2.ミクロでは、米小荷物輸送最大手のフェデックスが20日寄り前、2008年5
月期の通期利益見通しを最大4.3%下方修正。金融市場の変動の激しさとエネ
ルギーコスト上昇が背景。住宅市場の低迷で建築材の輸送量が減少している
と指摘し、フェデックス株価は2カ月ぶりの大幅な値下がりを演じた。物流会社と言うことで、景気先行指標的存在であり、今後の景気先行きに不安感を醸した。
今週の相場展望
FOMCが0.5% 利下げを発表した当日、業種別S&P500指数採用業種では、一般消費財が2003年以来の大幅な上昇率を遂げた。S&P500種構成銘柄のうち490銘柄が上昇。1996年以来の広範な上げとなった。景気後退懸念が沈静化したことが、消費関連株の急騰で確認できる。
大幅利下げは、当局の予防的措置であろう。利下げの目的はリセッション回避だ。政策対象はウォールストリートではなく経済のメインストリートである。イギリスでは住宅金融の取り付け騒ぎが顕在化し、遂に政府が預金保証に乗り出す結果となった。とりあえず大幅利下げで景気後退を防止するとともに、金融政策の自由度を確保しようとのスタンスであろう。ただし、以下の声明でもインフレ懸念に言及している通り、インフレも念頭に置いている。
(定例会合後に発表した声明は以下の通り)
今年前半の経済は緩やかに成長したが、借り入れ条件の引き上げで住宅調整が深刻化する可能性と、経済成長がより広く抑制される恐れが出てきた。この日の決定は金融市場の波乱が景気全般に与えうる悪影響の一部を抑止し、経済が長期的に緩やかに成長するのを促すのが目的。今年に入り、コアインフレの数値は小幅に改善してきた。しかしながら委員会はインフレリスクが一部に残ると判断し、慎重にインフレの動向を見守っていく所存だ。
長期債はFOMCが、インフレリスクが残ると指摘したことから下落した。米国債
市場では2年債と10年債の利回り格差が拡大した。ドル安と利下げでインフレ懸
念が強まったことが背景。10年債の利回り上昇は2年債利回りの上昇ペースを上
回り、イールドカーブがスティープニング化した。バーナンキ米連邦準備制度理
事会(FRB)議長が議会証言で住宅市場の調整がさらに深刻化する危険性があ
るとの見解を示したことから、更なる利下げ可能性が高まった。米連邦公開市場
委員会(FOMC)は国内景気配慮優先で、インフレ防戦にやっきになっていな
いとの見方が強かった。また、金、銀、原油等の商品価格が軒並み急伸している
ことも圧迫要因だった。
以下は各限月別FFレート先物の水準推移である。利下げのあった先週18日時点(青線)では、来年9月までに4% までFFレートが引き下げられることを示唆していた。しかし、20日時点(緑線)では、これが4.25% に上昇している。インフレリスクを背景に、大幅利下げ観測が後退しつつあることが示されている。

(出所:ECONODAYより)
以下のチャートは実質FFレート(FFレート‐インフレ率)の推移である。
赤線は、実質FFレートの15年間平均値であるが、これを見ても分かる通り、
いまだFFレートは引締め気味である。
(出所:ECONODAYより)
これに原油を初めとする商品価格上伸や、利回り曲線のスティープニング化に伴う長期金利上昇が景気抑制作用をもたらす。
また、債券ファンド最大手、パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の欧州国債部門責任者、マシュー・ルーアンジュ氏が21日「ECBの利上げサイクルは終了したと考える。通常、米金融当局が利下げを開始すると、それはユーロ圏の利上げ終えんにつながる」とコメントしており、21日(金)の債券、米ドル相場の落着きに寄与している。
従って、今後はむしろ景気のダウンサイド・リスクの方が表面化してくるのではないか。
あと数週間もすれば7−9月期の業績発表が始まる。銘柄ピックに際しては、注意が必要になってくる。その意味で、以下の銘柄群が面白いと思う。
目下、海外の主要経済ブロックの方が、米国より高い経済成長率が見込まれている。従って、海外売上比率が高く、ドル安メリットを享受する輸出関連株の魅力度が高い。翻って、米国内での高成長セクターは、設備投資関連である。
1.海外売上比率が高く、高成長
○海外売上比率が50% 以上である。
○利益成長率がS&P500指数平均9%に対し、18%程度である。
★トランス・オーシャン(RIG)
★コルゲート(CL)
★コカ・コーラ(KO)
★フリーポート・マクモラン(FCX)
★クアルコム(QCOM)
2.増配が予想される
○毎年平均2桁増配が今後数年間期待される銘柄。
★バンカメ(BAC)
★オールステート(ALL)
★ゼネラル・エレクトリック(GE)
★シェブロン(CVX)
★ペイチェック(PAYX)
3.業績が好調で、代表的ヘルスケアー、IT関連、農業関連
○好業績で、長期的に安定収益が見込まれる銘柄。バイオ、管理医療サービス、IT関連株。
★ジェネンテック(DNA)
★ユーナイテッド・ヘルス・グループ(UNH)
★シスコ・システムズ(CSCO)
★モンサント(MON)
★エヌビディア(NVDA)
★グーグル(GOOG)
★オラクル(ORCL)
今週は、マクロでは、9月消費者信頼感指数(コンセンサス予想 104.30<前月105>)、8月中古住宅販売件数(コンセンサス予想 550万件戸<前月575万戸>)、8月耐久財受注(コンセンサス予想 -3.0%<前月は5.9%>)、8月新築住宅販売件数(コンセンサス予想830,000戸<前月は870,000戸>)等が注目される。また、ミクロでは、Linux関連ソフトのレッドハット(RHT)、バス用品小売りのベッド・バス・アンド・ビヨンド(BBBY)、半導体ファウンドリーのジャビル・サーキット(JBL)、住宅建設大手のKBホーム(KBH)等が決算発表を行う。
株価指数ではダウ指数が先導役となっており、14,000ドルの史上最高値から、わずか1.3%下回るレベルまで戻している。史上最高値に接近したことから、更なる買い材料を探すこととなろうが、全般底固い相場展開になりそう。
予想レンジ
ダウ指数…13,750ドル〜14,000ドル
ナスダック指数…2,650〜2,700
米国株先週の動き
ダウ指数は先週、週間ベースで2.8%上昇。S&P500指数も同2.8%上昇した。またナスダック指数は同2.7%、小型株指数のラッセル2000指数は同3.8% 上げた。
(S&P500指数先週1週間の動き)

セクター別パフォーマンスでは、先週は、S&P500指数10業種全てで上昇した。上昇率の大きかったものから順に、素材、石油・天然ガス、通信サービス、工業、ハイテク、金融、公共、ヘルスケアー、消費財、消費サービスだった。
ただし、更に詳細な業種ごとパフォーマンスは以下の通りばらつきが出ている。

米国債券先週の動き
債券相場は軟調。超短期ものを除き、全ての満期もので利回りが前週比上昇した。30年債利回りは週間ベースで0.17%、10年債は同0.17%上昇。また、5年債は同0.13%、2年債も同0.02%上昇した。
(10年国債利回り推移)

(債券相場軟調の背景)
@連邦公開市場委員会(FOMC)は0.5%の利下げを決定、住宅市場減速による影響軽減を図った。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は18日、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.5ポイント引き下げて4.75%とすることを決定した。また、公定歩合を0.5ポイント引き下げ5.25%とすることも決めた。FF金利誘導 目標の引き下げは2003年6月25日(0.25ポイント引き下げ1%に)以来、4年3カ月ぶり。0.50%の大幅利下げはイラク戦争が迫り、地政学的リスクが景気を圧迫していた2002年11月6日の会合(0.5ポイント下げ1.25%に)以来4年10カ月ぶりになる。ただし、長期債はFOMCが、インフレリスクが残ると指摘したことから下落した。
Aインフレ懸念から、債券相場が軟調。米国債市場では2年債と10年債の利回
り格差が拡大した。ドル安と利下げでインフレ懸念が強まったことが背景。10年債の利回り上昇は2年債利回りの上昇ペースを上回り、イールドカーブがスティープニング化した。バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が議 会証言で住宅市場の調整がさらに深刻化する危険性があるとの見解を示したことから、更なる利下げ可能性が高まった。米連邦公開市場委員会(FOMC)は国内景気配慮優先で、インフレ防戦にやっきになっていないとの見方が強かった。また、金、銀、原油等の商品価格が軒並み急伸していることも圧迫要因だった。
昨年6月8日、米国債市場では3月28日以来始めて、10年債利回りが2年債利回りを下回る長短金利の逆転が発生したが、今年3月21日、FOMCが政策金利を据え置く一方で、利上げへの傾斜姿勢を取りやめたことから利下げ観測が再度カムバックした為、順イールドに戻った。その後、5月3日再度逆イールドとなったが、6月8日に再度順イールドにもどり、先週も順イールド状態は変わらず。

為替相場先週の動き
ニューヨーク外国為替市場ではドルが対円で0.1%上昇、対ユーロでは1.5%下落した。
(ドルの対ユーロ弱材料)
@ドルが対ユーロで過去最安値を付けた。FOMCの0.5ポイントの利下げを受けて、主要6通貨に対するドル指数は1992年9月以来の水準に低下。米連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利を0.5ポイント引き下げ4.75%とした。これは2003年以来初の利下げだった。
A米連邦公開市場委員会(FOMC)が利下げを継続するとの観測が強まった。
B英デーリー・テレグラフ紙がアナリストを引用し、サウジアラビアがドルへの
ペッグ制を廃止する可能性があると報じたことを受けて、ドルの下落が加速し
た。
C米連邦公開市場委員会(FOMC)は国内景気配慮優先で、インフレ防戦にや
っきになっていないととらえられた。
(ドルの対円強材料)
@安倍晋三首相の突然の辞任で日銀による年内利上げ見通しに不透明感が出た。
日本の利上げ期待が後退し、投資家の間では低金利通貨の円で資金を調達し、
高金利通貨で運用するキャリー取引への意欲が高まった。世界的株の上昇も背景。
A債券ファンド最大手、パシフィック・インベストメント・マネジメント(PI
MCO)の欧州国債部門責任者、マシュー・ルーアンジュ氏は21日、ECBの
利上げサイクルは終了したと考えている。通常、米金融当局が利下げを開始す
ると、それはユーロ圏の利上げ終えんにつながるとコメントした。
(直近1年間のドルの対ユーロ<茶線>、対円<黒線>上昇率推移)
原油相場先週の動き
ニューヨーク原油先物相場は続伸。週間で5.5% 上昇。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で取引される原油先物10月限は前週末1バレル=79.10ドルだったが、9月21日は83.42ドルで越週した。
(原油価格上昇の背景)
@国連安保理常任理事国とドイツが今月21日に対イラン追加制裁案について協議
するとのニュースが出た。
A連邦公開市場委員会(FOMC)が、市場予想の0.25ポイントを上回る大幅利
下げを決定したことから、経済成長やエネルギー需要を促すとの観測から買わ
れた。
Bエネルギー省の週間統計によると、14日までの週の原油在庫は387万バレル減少。この11週間で10週目の在庫減少となった。予想は203万バレルの減少だった。
Cドル全面安を受け海外勢の買いが入った。
D熱帯性低気圧の発生に備えた石油・ガス生産施設の閉鎖。ただし、メキシコ湾岸で熱帯性低気圧「10」が発生したものの、今後勢力を増す可能性は低いと、米ナショナル・ハリケーン・センターが21日報じた。
=以上=


