1月11日
森 崇
先週の動き
ダウ指数は先週1.64%下落。S&P500指数は同2.13%下落。ナスダック指数は2.81%下がった。また、小型株指数のラッセル2000指数は同4.13% 下落した。
(先週の米国株相場の動き)
先週は反落。
主な弱材料1.雇用関連統計が悪化。
@給与明細書作成代行会社のオートマティック・データ・プロセッシング(ADP)エンプロイヤー・サービシズによると、2008年12月の米民間部門の雇用者数は前月比69万3000人減少し、予想(49万5000人減)を大幅に上回る落ち込みだった。2001年の統計開始以来で最大の落ち込み。
A昨年12月の米企業の人員削減が予想を上回ったことが統計で示された。
B12月雇用統計で、08年12月の失業率は7.2%と、15年ぶりの高水準となった他、2008年通年の雇用減少幅が第2次世界大戦後で最大だったことが明らかになり、リセッション深刻化懸念が強まった。
2.米債券相場に弱気材料が出た。これを背景に中長期債が売られた。
@米国のプライマリーディーラー(政府証券公認ディーラー)17社を対象に実施した調査によると、2009年の米国債リターンは10年ぶりにマイナスになると言う。景気刺激策に弾みがつくため。指標となる10年物米国債相場の今年のリターン予想が中央値でマイナス3.1%。実際にマイナスとなれば、1999年のマイナス8.3%以降初の展開となる。
A先週号のバロンズ紙のカバー・ストーリーに債券弱気記事が掲載された。米国債相場は昨年、95年以来最高のリターンを記録して金利が非常に低い水準となっているだけに、利払い分では債券価格の下落を穴埋めできないという。
3.個別企業の悪材料が圧迫要因となった。
@シティグループ(C)
ドイツ銀行のアナリスト、マイク・マヨ氏は、シティグループの今年と来年の業績見通しを下方修正した。
A大手自動車各社が5日発表した12月の米自動車販売によると、同国のリセッションが影響し、フォード・モーターが前年同月比32%の落ち込み、クライスラーが同53%減となった。
B通信サービス株
通信大手のAT&Tやベライゾン・コミュニケーションズは大幅安。サンフォード・C・バーンスティーンがリセッションは携帯電話利用者に打撃を与えると指摘した。
Cインターコンチネンタル・エクスチェンジ(ICE)
先物市場運営会社、インターコンチネンタル・エクスチェンジが急落。BMOキャピタル・マーケッツが同社の利益予想を下方修正した。
Dアルコア(AA)
アルコアは急落。同社は今年の減産計画を明らかにしたほか、1万
3500人の削減を発表した。
Eインテル(INTC)
インテルが7日発表した2008年10−12月(第4四半期)の暫定売上高は82億ドルと、昨年11月に示した予想の約90億ドルを10億ドル近く下回った。アナリスト予想は、売上高が88億ドルだった。
Fタイムワーナー(TWX)
メディア大手のタイムワーナーは7日寄り前、2008年10―12月(第4四半期)に評価損として約250億ドルを計上することを明らかにし、同社の2008年通期決算は赤字になると発表した。タイムワーナーの従来予想では、08年通期の継続事業からの1株当たり損益は最大1.07ドルの黒字が見込まれていた。
G金融株に悪材料
オッペンハイマーのアナリスト、メレディス・ホイットニー氏は、ゴールドマン・サックス・グループやモルガン・スタンレーなど米国の金融機関は今年、一段の資本増強が必要になるとの見方を示した。
H小売会社に悪材料。
ディスカウント店大手のウォルマート・ストアーズ、百貨店のメーシーズ、衣料品小売りのリミテッド・ブランズは、リセッションの影響から年末商戦での販売が減少したことを受け、業績見通しを下方修正した。
Iバンカメ(BAC)に悪材料。
ムーディーズ・インベスターズは8日、金融持ち株会社バンク・オブ・アメリカの優先債格付けを「Aa2」から「Aa3」に引き下げた。
JPNCファイナンシャル・サービシズ・グループ(PNC)に悪材料。スタンダード・アンド・プアーズは7日引け後、オハイオ州の銀行ナショナル・シティーを買収したペンシルベニア州の銀行PNCファイナンシャル・サービシズ・グループの格付けを引き下げた。
Kベスト・バイ(BBY)
米家電量販店最大手のベスト・バイは9日、12月の既存店売上高(開店14ヶ月以上)が前年同月比6.5%減少、総売上高は75億ドルに増えたと発表。年末商戦で値下げを実施したが減少に歯止めがかからなかった。8日にはディスカウント店大手のウォルマート・ストアーズ、衣料品小売り大手ギャップ、百貨店のメーシーズが利益見通しを下方修正している。
LCVSケアマーク(CVS)
ドラッグ・チェーン大手が業績への警告。2009年通期ベース一株あたり利益が2.53−2.61ドルになると言う。予想EPSは2.69ドルだった。多くの薬局管理計画契約の更新が、低価格で交渉されていると言う。
Mコーチ(COH)
高級革製品小売りのコーチが8日引け後に2008年10−12月(第2四半期)暫定決算を発表したが、同社の従来見通しとアナリスト予想のいずれも下回った。
NKBホーム(KBH)
米住宅建設4位のKBホームが9日発表した2008年9−11月(第4四半期)の売上高は前年同期比56%減の9億1900万ドル、1株当たり損失額は3.96ドルと、予想(1.06ドル損失)より大きな落ち込みだった。ジェフリー・メッツガーCEOは、09年の住宅市場と全般的な経済情勢は困難な状況が続き、悪化する可能性すらあると発言。
Oレナー(LEN)
建設会社大手に悪材料。同社のジョイベンが、ねずみ講まがいの取引に手を染めているとの嫌疑がかけられていた。
Pシェブロン(CVX)
米2位の石油会社シェブロンは8日引け後、2008年10−12月(第4四半期)の経費が、通常予想される2億5000万−3億ドルの水準をはるかに上回ったとの見方を示した。また、同期の原油と天然ガスの生産も減少したもよう。
今週のマクロ経済指標
1月13日(火)*11月貿易収支…コンセンサス予想-520億ドル(前月は-572億ドル)
*1月IBD/TIPP景気楽観指数…(前月は45.0)
1月14日(水)*1月9日MBA住宅ローン申請指数…(前月は-8.2%)
*12月輸入物価指数(前月比)…コンセンサス予想-5.3%(前月は-6.7%)
*12月輸入物価指数(前年比)…(前同期比は-4.4%)
*12月小売売上高 … コンセンサス予想-1.2%(前月は-1.8%)
*12月小売売上高(除自動車)… コンセンサス予想-1.4%(前月は-1.6%)
*11月企業在庫 …コンセンサス予想-0.5%(前月は-0.6%)
1月15日(木)*12月生産物価指数(前月比)…コンセンサス予想-2.0%(前月は2.2%)
*12月PPI(除食品&エネルギー・前月比)…コンセンサス予想0.1%(前月は0.1%)
*12月生産物価指数(前年比)…(前同期比は0.4%)
*12月PPI(除食品&エネルギー・前年比)…(前同期比は4.2%)
*1月10日新規失業保険申請件数…(前月は467000件)
*1月3日失業保険継続受給者数…(前月は4611000人)
*1月ニューヨーク連銀製造業景気指数…コンセンサス予想-25.00(前月-25.76)
*1月フィラデルフィア連銀…コンセンサス予想-35.0(前月は-32.9)
1月16日(金)*12月消費者物価指数(前月比)…コンセンサス予想-0.9%(前月は-1.7%)
*12月CPI(除食品&エネルギー・前月比)…コンセンサス予想0.1%(前月は0.0%)
*12月消費者物価指数(前年比)…コンセンサス予想-0.1%(前同期比は1.1%)
*12月CPI(除食品&エネルギー・前年比)…コンセンサス予想1.9%(前同期比は2.0%)
*12月CPI Core Index SA…(前月は216.849)
*11月ネット長期TICフロー合計…(前月150億ドル)
*11月ネットTICフロー合計…(前月は2863億ドル)
*12月鉱工業生産…コンセンサス予想-0.8%(前月は-0.6%)
*12月設備稼働率…コンセンサス予想74.7%(前月は75.4%)
*1月ミシガン大学消費者信頼感指数…コンセンサス予想58.9(前月は60.1)
今週の主要企業業績発表予定
今週の展望
先週は、政策面で新規材料がなかった反面、景気指標、企業業績で悪材料が目立ち、相場は反落した。
今週は、12月小売売上高はじめ、1月ニューヨーク連銀製造業景気指数、1月フィラデルフィア連銀、12月鉱工業生産などが注目される。小売統計は、年末商戦不振から、数値は悪化が見込まれる。企業決算では、アルコア、ジェネンテック、インテルが重要だ。ただし、インテルやアルコアは既に業績への警告を発しており、アナリスト予想も下方修正されている。
このところ、実体経済悪化に対し、景気対策期待が米国株相場への支持要因となっているだけに、政策動向が重要である。その意味では、以下が注目される。
1.まず、オバマ次期大統領は10日、週末のラジオ演説で、期間2年間の景気対策で当初の見込みを上回る最高400万人の雇用が創出され(当初は300万人の雇用創出を掲げていた)、具体的には建設、製造業、小売業での雇用増が大きくなるとの予想を明らかにした。議会と協議中の景気対策の規模は7750億ドル(約70兆円)を若干上回るとの前提に立っている。
2.また、米下院金融委員会のフランク委員長は9日、総額7000億ドルの金融安定化策の残り3500億ドルの承認に関連して、住宅差し押さえの防止に最高1000億ドルを充当するなどの条件を盛り込んだ法案を公表した。金融安定化策の後半3500億ドルの拠出には米議会の承認が必要である。オバマ次期政権に対して3月15日までに住宅差し押さえの防止策を策定するよう義務付けている。
3.欧州連合(EU)の欧州委員会は、加盟国の企業支援に対する規制を大幅に緩める。2010年末までの2年間の特例措置で、1社あたり最大50万ユーロ(約6500万円)の補助金を無条件で認めるほか、中小・零細企業への資本支援の上限を暫定的に約1.7倍に拡大する。深刻な景気後退を防ぐため。 4.世界最大級の自動車イベント、北米国際自動車ショーが11日デトロイトで開幕した。各社は電気自動車や新型ハイブリッド車など環境対応車を目玉に据える。ビッグスリー(米自動車大手3社)が米政府支援を受け、ここで何らかの再建策が発表される可能性がある。
さて、相場は調整しただけに、今週は下げ渋りから反発に向かうと見る。
予想レンジ
ダウ指数…8,500ドル〜9,000ドル
ナスダック指数…1,550〜1,700
米国債券先週の動き
債券は反落した。30年債の利回りは対前週比0.24%上昇。10年債は同0.02%上昇。また、5年債は対前週比0.15%上昇。2年債は同0.15%上昇。とりわけ30年債の利回り上昇が顕著だった。
(債券相場の弱材料)
@財務省が先週の入札規模を540億ドルと発表したため、過去最高の国債発行につながるとの懸念が強まった。
A民主党幹部はオバマ次期大統領が景気刺激策の一環として3000億ドルを超える減税を推進していることを明らかにした。
B米議会予算局(CBO)が7日発表した半期報告書によると、今年度(9月終了)の財政赤字は少なくとも1兆1800億ドル(約109兆円)と、前年比で2倍以上に膨らむ見通し。CBOによると、実質国内総生産(GDP)に対する今年度の財政赤字の比率は8.3%の見通し。これは6%を記録した1983年を上回り、第二次大戦後では最高となる。
C過去最高規模の3年債入札(300億ドル)の需要がさえなかった。また、財務省は8日に160億ドル相当の10年債入札も実施する。
2006年6月8日、10年債利回りが2年債利回りを下回る長短金利の逆転が発生したが、2007年3月21日、FOMCが政策金利を据え置く一方で、利上げへの傾斜姿勢を取りやめたことから利下げ観測が再度カムバックしたため、順イールドに戻った。その後、5月3日再度逆イールドとなったが、6月8日に再度順イールドに戻った。その後、度重なる利下げを経た後、2009年1月9日現在も順イールド状態は変わらず。ただし、利回り曲線は、30年債中心に利回りが上昇し、全体としては上方シフトするとともに、スティープニング化が進んだ。
為替相場先週の動き
ニューヨーク外国為替市場では、ドルが対ユーロで3.42%上昇、対円では1.79%下落した。
(対ユーロでのドル高材料)
@政権移行チームの当局者が、オバマ次期大統領の景気刺激策規模は最大7750億ドル(約71兆3500億円)になる見込みで、減税は3000億ドル余りとなる公算であるとした。
A6日発表された2008年12月のユーロ圏インフレ率が予想を下回る上昇にとどまったことから、欧州中央銀行(ECB)が予想以上の利下げに踏み切るとの見方が広がった。ECBが15日の政策決定会合で、少なくとも0.25ポイントの利下げを決定すると予想されている。
B2008年12月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数の減少幅が一部のエコノミスト予想を下回った。
C欧州中央銀行(ECB)が来週の政策決定会合で、金利を05年以来の低水準に引き下げるとの観測が広がった。
原油相場先週の動き
原油価格は反落。前週末比で11.92% 下落した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で取引されている原油先物2月限は前週末の1バレル=46.34ドルに対し、1月9日は40.82ドルで越週した。
(原油価格が反落した背景)
@昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録で金融政策当局者が悪化する経済に対して相当な下振れリスクを認識していたことが明らかになり、売りが出た。
A米エネルギー省の週間在庫統計で原油や石油製品の在庫が予想以上に積み上がったことを嫌気した。原油在庫は前週比668万バレル増の3億2540万バレルと、昨年5月以来の高水準。予想は80万バレル増だった。
B08年12月の失業率が7.2%と、15年ぶりの高水準となったことから、リセッション深刻化懸念が高まるとともに、OPECの減産より、需要減少ペースの方が大きくなるかもしれないとの見方が出た。
=以上=



